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代表だいちのGREENWOODコラム


2016年1月10日
「ひとに成る 〜信州泰阜村の素敵な成人式〜」


 年が明けるとすぐに、今年20歳を迎える暮らしの学校「だいだらぼっち」の卒業生が帰ってくる。毎年のことだ。
 今年で卒業生はのべ500人。彼らは全国、そして世界中に旅立っている。その際「行ってきます!」と言って、泰阜村を出て行く。たまに村を訪れるときは「行ってきました」と帰ってくる。村人もまた「行ってらっしゃい」と送り出し、「お帰り」と迎える。
 泰阜村は、帰省する若者を考慮して、毎年1月3日に成人式を開催する。その成人式に「だいだらぼっち」の卒業生を招待してくれるのだ。これは本当にすばらしいことだ。泰阜村の成人式は、成人となろうとしている青年が今そこに住民票があるかないか、という基準で執り行われる成人式ではないということがわかる。「だいだらぼっち」の土台である泰阜村は、まさに卒業生にとっての第二のふるさとだ。

 この村には「ひとねる」という方言がある。「育てる」という意味だ。語感としては「人練る」ということか。そして「育つ」ことを「ひとなる」という。人に成る、ということだ。
 1月3日。まさしく「成人式」から帰ってきた暮らしの学校「だいだらぼっち」の卒業生たち。われわれとも記念撮影を終えたら、村の友人たちと2次会だそうだ。素敵な仲間にも恵まれて、素敵な人生の一歩を踏み出して、素敵な大人に成長していく。
 卒業生の一人が今、私の故郷にある大学に通っている。「よっしゃ、今度福井で飲むか」と声をかけたら、めちゃくちゃ喜んでいた。もう一人は山梨の大学に通っている。その大学ではもう2回、私は特別講演をしている。次に私が講演に行くことがあれば、「私が、泰阜で過ごしたこどもの頃の暮らしと、その暮らしが今の自分にどんな影響を与えてるか、しゃべるよ!」と、はじける笑顔で提案してくれた。
 音楽の道に走ろうとしている人、魚が周りにある暮らしを目指す人、美容師として社会にはばたく人…。
 一緒に酒を酌み交わし、人生を語るようになった。そんなこどもが毎年増えていく。成人した子どもたちを見て、きっと私もうれしい顔をしていたに違いない。村の子と留学の子が、これからの社会を素敵に創るだろう。一人前の人に成って。  (代表 辻だいち)

 代表 辻だいち




2015年12月11日
「あんじゃね支援学校が受賞! 〜それは小さな村の大きな挑戦の始まりなのだ〜」


 このたび、「伊那谷あんじゃね支援学校」の取り組みが、公益財団法人程ヶ谷基金「男女協働参画・少子化に関する顕彰活動賞」を受賞しました。12月11日(金)に東京で行われた授賞式に、校長の木下藤恒さんと一緒に参加してきました。木下さんは、私の著書で「わしゃ、生まれ変わったら教師になりたい」という魂の言葉を発した人です。私の著書では、あんじゃね支援学校がNPOグリーンウッドの25年の到達点の一つのカタチであると記しました。この目には見えにくい到達点を、評価いただき率直に嬉しく想います。ちょうどよいので、この取り組みについて以下に記しますのでご理解をいただければ幸いです。

 2002年4月、泰阜村に小さな「伊那谷あんじゃね自然学校」が誕生した。「あんじゃねぇ」とは「案じることはない」「大丈夫」という意味の南信州の方言。そこには、きびしい自然と共存しながら暮らしてきた先人の生きる知恵を、村の子どもたちに伝えていきたい。そして、子どももお年寄りも「案じることはない=あんじゃねぇ」と安心して暮らせる村にしたい、という願いが込められている。毎月1回〜2回、村の児童のうち1割〜2割にあたる児童が参加する。
 2007年、それまでNPOグリーンウッドが主導してきたこの自然学校が質的発展を遂げる。「このままでは村の人々が大事にしてきた文化が村の子どもに伝わらない。NPOに任せるだけではなく、村に住む大人が力を合わせて伝えていかなければならない」と願う大人たち15人。ゆるやかだが力強く地域教育を進めていこうとする村人が集まって会議が開かれることになった。
 この会議のことを「あんじゃね支援学校」という。それは、読んで字のごとく「あんじゃね自然学校」を支える大人たちが学び合う場だ。構成員は、小中学校、小中保PTA、保育園、役場職員、青年団、NPO、農家、猟師、議員、陶芸家、炭焼き職人、Iターン代表者など、20〜80代まで職業も年齢もさまざま。全員参加の会議は、年に3〜4回。平日夜の開催にもかかわらず、多くの構成員が出席する。村の子どもたちの未来のために、村の大人たちがああでもない、こうでもないと頭をつき合わせて考えたり、笑ったりする。これまでも村の寄り合いなど集まる場はあったが、子どもをテーマに、こんなにもざっくばらんな集まりはこれまであるようで実はなかった。活動の中心は20〜30代の若手であり、地域内のNPOとIターン者、地元の若者が地域の教育財を見つめ直す先頭に立っている。
 都市部を機軸とした経済・教育政策によって、過疎農山村の二つのものが失われつつある。一つは、教育のありようを地域に住む人々が決めていく「教育の自己決定権」。もう一つは、地域住民が少ない資源を持ち寄って地域課題を解決する「支え合い・共助の仕組み」だ。「あんじゃね支援学校」は、この失われた二つのものを取り戻すことを通した地域再生の取り組みでもある。
 「あんじゃね支援学校」のメンバーは、業種や役職といった壁を超え、今自分ができることや提供できることを会議に持ち寄っている。それは、「支え合い・共助の仕組み」が、子どもの教育を通して、豊かにつくり直されていくきっかけでもある。
 多様な分野の人が集う横の広がりだけではない。小学生対象の「あんじゃね自然学校」をどうするか、という議論は、次にさまざまな年齢層が関わるという縦の広がりも生み出した。そして中学生や幼児の参加機会を増やし、近隣の高校生や大学生がボランティアに参加してくれるようになった。
 週末のこども居場所の質の高さは、放課後のこどもの居場所への期待へと膨らみ、今年度から学童保育も手掛けるようになった。活動開始から13年。地域の大人による良質な教育活動に関わったこどもたちが、今やそのまま村で就職するようになった。驚くべきことに、Uターンで帰ってくる若者も増え始めた。彼らのこどもたちが参加し、「学びの循環」が生まれる日は近い。
 小さな山村の住民、とりわけ村行政とNPO,そして学校が協働して山村が持つ教育力を信じぬき、「支え合い・共助の仕組み」を豊かにつくりなおすことを通して「教育の自己決定権」を発揮していきたい。日本一の学びの村を目指す。それは小さな村の大きな挑戦である。    
 代表 辻だいち




2015年10月31日
「夏の信州こども山賊キャンプの御礼」


 2015年度の夏の信州こども山賊キャンプが、関係各位のご理解ご協力をいただき、8月31日を持ちまして大過なく終了いたしました。この場をお借りしまして、キャンプを支えていただきました皆様に、主催者を代表して心より御礼申し上げます。
 さて、今年も全国から約1100人のこどもと約300人の青年ボランティアリーダーが参加し、質量共に充実したキャンプを運営することができました。近年、日本でも有数の規模と内容を持つキャンプとしての評価をいただいており、当センターの教育活動に対するご理解とご期待の広がりを感じております。
 ご存知の通り、山賊キャンプが開催される泰阜村は、今なお国道が走っておらず、信号もなければコンビニもありません。人口1,800人弱の、まさしく「何もない」と揶揄されるほどの典型的な山村です。このような村に、ひと夏で村の人口に迫りそうな青少年が参加する山賊キャンプについて、「『何が』こんなに青少年を惹きつけるのか」という疑問が多方面から寄せられております。
 その疑問に対する答えはいたってシンプルで、山賊キャンプでは「自分たちのことは自分たちで決めることができる」からです。期間内のプログラムも、毎日食事のメニューも、暮らしの仕事の役割も、すべて自分たちで知恵を絞って決めます。キャンプが始まったばかりのときは自分たちで決めることに戸惑い気味のこどもたちが、最終日にはキャンプの時間やスケジュールが「自分たちの手にある」という確かな実感を抱くようです。この実感が、山賊キャンプの人気の大きな理由のひとつです。
 「同じ釜の飯を食べた仲間」とはよく言われますが、寝食を共にした仲間は理屈抜きに仲良くなります。山賊キャンプはまさしく「同じ釜の飯を食べる」具体的な場面でしょう。しかしながらその場面はだいたいにして「ちょっと不便な環境」です。相手が自然であり、しかも初めて出会う人との生活では、何が起こるかを予想できません。このような「不便な環境」、言葉を換えれば「思い通りにならない環境」の中で、寝食を共にして自分たちの手で暮らしを創り上げてこそ学べる「何か」。それは「違いを認めて支え合うセンス」です。このセンスを学べるからこそ、多くのこどもたちが泰阜村にやってくるのです。
「何もない」と言われる泰阜村の人々はしかし、少ないながらもそれぞれの財(時間、労働、食料、情報、お金など)を持ち寄って、力を合わせて豊かな地域コミュニティを創り上げてきました。困ったときはお互い様、何かあったら寄り合ってみんなで決める。村の人々が渾身の力を振り絞って産み出し、丁寧に積み重ねてきたこの「支えあい」と「自己決定」の文化と歴史が、山賊キャンプを土台から強烈に支えています。
 時代は質の高いこどもたちへの教育活動を求めています。今後も山村の暮らしの文化に埋め込まれた教育力を信じぬき、参加するこどもたちはもちろんのこと、その保護者の皆様や、青年ボランティアや学術機関、泰阜村の人々など、関わる人々すべてが良質な学びを培うことのできる山賊キャンプを目指して、より一層努力して参ります。今後の益々のご理解とご支援をお願い申し上げ、御礼のご挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。
 代表(最長老) 辻だいち




2015年9月11日
 「今こそ、希望・未来を語りたい」



 「教えるとは、未来(希望)を共に語ること」
 フランスの詩人、ルイ・アラゴンが言った。
 1943年11月、中仏オーヴェルニュ地方においてストラスブール大学の教授、学生が銃殺され、数百名が逮捕される事件が起きた。大学は、戦火と弾圧を避けて、ストラスブールからクレルモンという地に疎開し、再びこの地で開学していた。彼がこの悲劇の最中にその心境を唄った「ストラスブール大学の歌」の中に、冒頭の言葉がある。
 青年への虐殺が繰り返される絶望的な状況に陥ってもなお、命を賭けて未来を切り拓こうとする姿勢こそ「教える」ことの本質だ、というこの言葉は、現代の我々に教育の本質を強烈に突きつける。
 
 「貧すれど貪せず(貧しいけれども、心は貪しない)
 これは、南信州泰阜村の魂の言葉だ。
 昭和初期の世界恐慌。泰阜村でも村民の生活は窮乏していた。村では教員に給料を支払えず、給料を村に返上して欲しいと要望が出る。しかし当時の校長は、「お金を出すのはやぶさかではないが、目先の急場をしのぐために使うのではなく、むしろそのお金をもって将来の教育振興に役立てるべきだ」と、将来を担う子どもの情操教育のための美術品購入を村に提言した。「どんなに物がなく生活が苦しくても、心だけは清らかで温かく、豊かでありたい」という考えは、村民のほとんどから賛同を得られたという。
 最も厳しい時にこそ、子どもの未来にお金も気持ちも注ぐべき、という気風は、今なお泰阜村に暮らす人々に脈々と受け継がれている。

 命を賭けて、全てを賭けて、こどもに未来を示す。それが「教育」の本質だと。フランスでも信州の山奥でも、昔の人はかくも壮絶な想いで教育を捉えていたのかと絶句する。

 泰阜村に「育てる」という意味の「ひとねる」という方言がある。子どもが「育つ」ことを「ひとなる」ともいう。人に成る、人間になるということだ。一人前になるためには、未来を共に語る命懸けの気概を持った大人が必要なのだ。

 再び巡ってきたこの厳しい時代。子どもたちはあらゆるSOSを出している。子どもたちの未来・希望を語る大人でいられるかどうか。大人こそ瀬戸際にいる。
 今こそ、教育に心血を注ぐ気概を持ちたい。 
 代表 辻だいち




2015年8月15日
 「8月にキャンプができる幸せ」



 8月。今、南信州泰阜村では全国から約1,100人の子どもたちと約300人の学生ボランティアが集い、自然体験教育キャンプが開催されている。「何も無い」と揶揄されるこの村で行われるキャンプが、今や行列ができている。それはこのキャンプでは「何か」が学べるからであり、それが支持されているからに違いない。

 今年のキャンプは3泊から11泊のコースまで全30コース。どのコースでも、参加している子どもたちは、それぞれの期間の自然体験・共同生活の中で、確実に自分自身の世界を広げることにチャレンジ゙している。最初はバラバラに動き、仲間に思いやりを持てなかった子どもも、折り返し点を迎えると、仲間の個性を認めること、仲間と協力することの大切さやすばらしさを体感し始める。

 「同じ釜のメシを食べた仲間」とはよく言われるが、寝食を共にした仲間は理屈抜きに仲良くなるものだ。キャンプはまさしく「同じ釜のメシを食べる」具体的な場面だろう。しかしながらその場面はだいたいにしてちょっと不便な環境だ。相手が自然であり、しかも初めて出会う人との生活では、何が起こるか予想できない環境でもある。

 このような思い通りにならない環境の中で、寝食を共にしてこそ学べる「何か」。それは「みんな違って、みんないい」という「違いを認め合うセンス」だ。このセンスを学びに、全国から多くの子どもたちが泰阜村に集まってくる。

 「違いを認め合うセンス」。それは換言すれば「多様性の共存のセンス」だ。このセンスを学んだ子どもたちが増えていけば、きっと戦争や紛争は起こらないだろうなと、半ば確信的な想いを持っている。少なくとも私はこれらのセンスを帯びた平和な世界をイメージしてキャンプを開催している。

 ヒロシマ、ナガサキ、そして終戦。8月は今年もまためぐってくる。今こそ次の世代に「多様性の共存のセンス」を伝えたい。8月にキャンプを開催できることを幸せに想う。

 代表 辻だいち

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