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代表だいちのGREENWOODコラム


2015年7月18日
「山賊キャンプ始まる 〜政治家は山賊キャンプに学べ〜」



 7月18日。今日から南信州泰阜村では「信州こども山賊キャンプ」が始まった。8月31日まで、全国から約1,100人の子どもたちと300人の青年ボランティアが集う。

 人気の秘密は至ってシンプルで、キャンプのプログラムを「自分で決めることができる」からだ。しかし、初めて参加したこどもは、まず「自分で決める」ことに戸惑う。おそらく、ルールや決まりごとをこども自身で決めた経験が少ないのだろう。彼らにとって、きっとルールは大人が決めるもので、すでに存在しているものなのだ。

 プログラムが進み自分で決めることに戸惑いがなくなったこどもは、今度は「変える」ことに戸惑う。一度決めたルールは、妙な責任感や正義感が生ずるのかテコでも変えない。そのルールが全く実態にあわなくなっているのに、と苦笑するばかりだ。まるで、法律が時代遅れになっているにもかかわらず改正されない国会のようだ。これもおそらくルールをこども自身で変えた経験が少ないのだろう。これらは青年ボランティアにもそのままあてはまることだ。

 自分で決めること・変えることの欠如、それは民主主義の崩壊を招く。それは論理の飛躍ではないように思う。「決める」という自分の責任に向き合えない人が、相手の責任に丁寧に向き合えるわけもない。そしてその丁寧さを省くあまりに、合意形成の際にはたやすく多数決を用いることになる。

 しかし、民主主義=多数決ではない。本来多数決とは、少数意見を多数意見に反映するための決め事ではなかったか。少数意見に耳を傾け、尊重し、多数意見を調整して結論を出す。時間はかかり、ときには少数意見に結論がひっくりかえるときもある。こうした自分と自分の意見が大切にされている経験を重ねること、そして相手と相手の意見を大事にするという経験を、丁寧に積み重ねることが、今のこどもたちにとって大事なのだ。

 「一人一人(の意見)を大事にすること」が、教育現場でも家庭でも地域でも蔑(ないがし)ろにされてはいないか。それを最も痛感するのが最近の政治家、とりわけ国会議員の議論であることが、残念でならない。

 それでも教育者のはしくれとして私は言わなければならない。それぞれの意見を大事にしつつルールや結論を決める、という民主主義の土台を教えていくのが教育の役割だ、と。政治家の劣化や民主主義の崩壊などと、あきらめている場合ではない。

 信州山賊キャンプでは「一人一人を大事にする」教育の質を深めたい。「自分たちのことは自分で決める(自己決定権)」を取り戻す教育を行いたい。本質的な教育改革は、信州の山奥から始まる。

 代表 辻だいち


2015年6月30日
「切り札 〜巻き起こる学びの循環〜」



 二つ前のコラムで「学びの循環」について書いた。
私は地元の飯田女子短期大学で授業を受け持っている。3月に養護教諭(保健室の先生)のタマゴたちが社会にはばたいていった。その際、以下を記した。
「もしかすると私の息子や娘の小中学校に赴任してくるかもしれない。そう考えると不思議というか腑に落ちるというか。まさに「学びは循環している」と感じる。人を育てる醍醐味を私も感じている。」

 それが現実になった。3月まで私の教え子だった学生が、4月から泰阜小学校の養護教諭として赴任してきたのだ。彼女が暮らしの学校「だいだらぼっち」のこどもたちの先生になる。私の息子や娘の通う小中学校の先生になる。率直に驚きである。
そして、醍醐味も感じるのだ。泰阜村の風土に立脚したわれわれグリーンウッドの教育。その教育を受けた学生が、今度は教員となって泰阜村のこどもたちと向き合う。まさに「学びの循環」である。

 来年で30周年を迎えるグリーンウッド。30年も続けていると、このような学びの循環が次々に起こるようになってきた。
信州こども山賊キャンプに参加していたこどもが、今、グリーンウッドの職員となって山賊キャンプを企画する部署の責任者をやっている。
グリーンウッドで4年間職員だった女性が、今、泰阜村役場の職員となって、鳥獣害対策と皮革開発に取り組む。
暮らしの学校「だいだらぼっち」の卒業生たちが、毎夏毎夏の信州こども山賊キャンプの裏方を手伝いに来てくれる。もちろんボランティアで、だ。
そして暮らしの学校「だいだらぼっち」の卒業生が、いよいよ泰阜村に移住してきた。村役場の職員となり、集落の支援をがんばっている。
 この村で丁寧に続けてきた30年の教育活動に参画した人材が、今、泰阜村のために働いている。30年の教育活動によって産み出された「知」や「技」や「志」が、村のあちこちでいかされている。もちろん、全国にも、そして世界中にも。

 泰阜村には間違いなく教育のチカラが存在する。大事なことは、そのチカラを信じることができるかどうかだ。この30年は、村民の皆さんと共に、そして30年の教育活動を通してわれわれや泰阜村のファンとなっていただいた皆さんと共に、そのチカラを形にしようとする挑戦の日々だった。やっとおぼろげながらに見えてきたそのチカラ。
これからがおもしろくなる。村の風土に埋め込まれた教育のチカラを信じ抜こう。そして、学びの循環がうねりとなって巻き起こる村にしていこう。

 へき地山村の教育力が、日本を変える切り札になる。その日は近い。 

 代表 辻だいち


2015年4月28日
「81票で当選! 〜まずは自分から、である〜」



 初めて投票に行ったのは、何の選挙だろう???

 大学に入学したのは1989年。その夏の参議院選挙で、体育会の先輩が「スポーツ平和党に入れるかな〜」って言ってたのを想い出す。懐かしい。あの当時、投票しても何も変わらないと思っていた。でも、その参議院選挙はマドンナ旋風で「山が動いた」。秋にはベルリンの壁が崩壊。そしてその後の非自民連立政権で政権交代。
 思えばすさまじい時代だった。

 思い起こせば初めての選挙は、札幌市長選だった。あれから25年。小さな村が真っ二つになる熾烈な選挙、どうせ…という「あきらめ」が支配する無気力な選挙、そして身内が関わる選挙、いろいろ体験してきた。

 今回の地方選挙前半。長野県議会議員なんてこの4年間、顔も見たがことない。息子や娘の小中学校の卒業式祝電や、地域の葬式弔電でその名前を聞くくらいだ。「この人」という候補者は正直いない。それはどこの地域も同じだろう。
 でも、それは投票を棄権する理由にはならない。棄権や白票ではない形で意志を表明することが、やっぱり権利を行使する責任。25年たって、少しだけ成長したかもしれない。

 そして地方選後半。私の住む泰阜村は12年ぶりの村議会議員選挙になった。定数9人に対して10人が立候補で、なんと全員顔見知り。それどころか長年一緒に仕事をしたり、この村の未来を語り合ったりする仲間である。議員や政治が近すぎて戸惑うくらいだ。
 有権者は1400余名。最下位当選は81票で、トップ当選でも170票余り。自分の1票がいかに重いかを思い知る。学生時代に感じた「投票しても何も変わらない」という想い、最近の国政や知事選で感じる「どうせ・・・というあきらめ」が恥ずかしい。

 戦後70年を迎えるこの国は今、本質的な意味での「民度」が試されている。まずは足元から、権利を行使する責任を果たそう。どのような形にせよ結果的に送り出した議員の皆さん。彼らが形作る議会による政治が、この小さな村でも、長野県でも始まる。小さな地域から「民度」を高めたい。
 まずは自分から、である。

 代表 辻だいち


2015年3月30日
 「学びは循環している」


「今度は保健室でがんばります!」。学生が最高の笑顔を残して教室を出ていった。

 私の住む泰阜村は、長野県南部に位置する。南部の拠点都市は人口10万人程度の飯田市。
飯田市には4年制大学がなく、唯一女子短大がある。ということは、南部出身の進学希望の若者は、一度は南部から出ていく運命にある。だから今、飯田市に4年制大学を創設する動きもある。

 さて、私はこの飯田女子短期大学で、5年間授業を受け持ち続けている。5年前までは、短大と正直あまり接点がなかった。村のこどもたちの未来を考える「あんじゃね支援学校」に、短大の教授を招いたのがきっかけだ。彼は議論を通して、飯田市の隣村に「かくも力強い実践とノウハウ」があると感じたらしい。短大の教育の質を上げるためには、地域の教育資源と連携しなければ。彼は奔走したそうだ。そして、翌年から私は非常勤として授業を持つことになった。

 現在、養護教諭(保健室の先生と言ったほうがわかりやすい?)を育てるコースで3つの授業を持っている。「養護処置」という授業では、こどもたちの日常に潜むリスクについて教えている。「ファーストエイド演習」という授業では、応急処置の国際認定コース(MFA:メディックファーストエイド)を実施する。「青少年体験活動演習」という授業では、実際のキャンプボランティア実習を通して全国的な自然体験指導者資格を取得する。
 いずれも私たちNPOグリーンウッドの得意分野がカバーされている。それは逆に、短大が教室の中だけれは実践的な学びを提供しにくい分野であることに他ならない。

 今年度後期は「養護処置」のみの授業だった。教科書には書いていないリスクがたくさんあること、それに瞬時に立ち向かって状況判断をしなければならないということ、それを15回の授業でワークショップを主体に考えてもらった。ただ座って黒板に書かれる文字を暗記するだけだった学生には、私の授業はずいぶんと新鮮だったらしい。彼女たちはまだ20歳になったばかりだ。しかし短大ではもう卒業で、4月には社会に出ていく。まだ赴任するところが決まっていない学生もいる。それでも彼女たちは元気に出て行った。「今度は保健室でがんばります!」

 その底抜けに明るい笑顔を最後にプレゼントされた私は想う。人生を前向きにとらえることができる若者が地域の未来を変えていく、と。信州南部の若者が2年とはいえ地元の大学で学んだ。そして、信州のために社会に出ていこうとしている。がんばれよ。信州の未来は君たちにかかっている。

 しかし、もしかすると私の息子や娘の小中学校に赴任してくるかもしれない。そう考えると不思議というか腑に落ちるというか。まさに「学びは循環している」と感じる。人を育てる醍醐味を私も感じている。
 代表 辻だいち




2015年3月11日
「過去に目を閉ざすものは・・・」



 大学に入る前に、第二外国語を選ぶ。「文化・芸術ならフランス、研究ならドイツ」。亡き親父にそうアドバイスされた。じゃあ、ドイツかな?(笑)と、ドイツ語を選択した。それがドイツとのかかわりの最初。1989年春のことである。その年の11月9日、ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツの対立が終わった。それはそのまま冷戦の終結へと進む。今思えば、激動の時代だった。

 ドイツのメルケル首相が来日した。現代の冷戦とも言われるウクライナの停戦あっせんをした剛腕だ。日独首脳会談や講演で、ドイツが大戦後に周辺国と和解を進めるために「ドイツが過去ときちんと向き合った」と強調する。その一方で、「隣国(フランス)の寛容さ」もあったという。日本とアジア諸国に向けてのメッセージだろう。

 ドイツといえば、先月94歳で亡くなったワイツゼッカー大統領。ドイツの敗戦40年にあたる1985年に連邦議会で行った「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」との演説がつとに有名だ。その原文を抜粋で記す。

今日の人口の大部分はあの当時子どもだったか、まだ生まれていませんでした。この人たちは自ら手を下していない行為について自らの罪を告白することはできません。
ドイツ人であるというだけの理由で、粗布(あらぬの)の質素な服をまとって悔い改めるのを期待することは、感情を持った人間にできることではありません。しかしながら先人は彼らに容易ならざる遺産を残したのであります。
罪の有無、老幼いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。だれもが過去からの帰結に関わり合っており、過去に対する責任を負わされております>
問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。


 この演説の日付は5月8日。私の誕生日と同じ日付である。なるほどこのような歴史的な日だったか。だれそれと同じ誕生日などと言っている自分が恥ずかしい。

 今日は言わずと知れた東日本大震災から4年目の日。この日本では、70年前の過去もそうだが、4年前の過去ですらどこにいってしまったのかと本当に心配になる。福島、東北の状況から目をそらしてはなるまい。

 メルケル首相は、もともと原発推進論者だ。しかし東日本大震災の福島原発事故に直面し、政策大転換をした。高度な技術を持つ日本でさえ事故が起こり、現実とは思えないリスクがある。だから「ドイツの核の平和利用の時代は終わった。新しいエネルギー制度を構築を決める」と。2022年に原発全廃を決定した。要は政治判断であり、政治家が決断するべきものだ、という。そして「日本も同じ道を歩むべきだ」と呼びかけている。ドイツでは、2010年総発電量の17%だった再生エネルギーが、2014年には27%に達した。まさに有言実行の剛腕だ。

 過去を見つめる。それは決して大げさなことではない。3月。間もなく別れと出会いが訪れる。1年前の今日、どのような気持ちでいたのか。それをもう一度しっかりと考えてみたい。14時46分に黙祷をしながら。
 代表 辻だいち

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