NPO法人 グリーンウッド自然体験教育センター
代表だいちのGREENWOODコラム


2009年01月07日
『年頭にあたっての提言 〜 教育の質を問い直せ! 「他者との関係を豊かにする学力」〜』

近年、「学力の低下」が叫ばれています。国際学力テストの点数の低さが、国力や経済的競争力の危機を憂える議論と結び付けられて、教育の危機を表す指標としてしばしば用いられています。しかし、学力論はこれまで歴史の節目節目で議論されてきましたが、そもそも「学力」とは何なのかという定義はまだなされていません。それにもかかわらず、学力テスト等ペーパーテストで数値化しやすい評価指標だけから論じられていること、そしてそもそも誰のための「学力」かという視点が欠けたまま議論が展開されていること、その二つについて大きな疑問を抱きます。
 学力テストや難関高校・大学合格者数のように数量化できるような従来の「学力」は、「個人が所有する学力」といえます。分数の計算や漢字の聞き取りなど「個人が所有する学力」は、自立して生き、生活を支え、社会を発展させる原動力であることは間違いありません。しかし、一生懸命所有した知識や技能は、他人を蹴落として自分の受験合格や出世のために使われていく場合が圧倒的に多いのではないでしょうか。そこには、所有した知識や技能を他人のためや社会にどのようにいかすのかという視点が欠けています。もはや現在の教育の競争システムは「個人が所有する学力」を高める動機付けはできても、他者の役に立つようないわば「他者との関係を豊かにする学力」を育てることはできていないのです。
サリンをまいて世の中を震撼させた宗教団体の信者は、「個人が所有する学力」の視点からいえば確かに「高学力」でした。しかし「他者との関係を豊かにする学力」の視点からいえば明らかに「低学力」です。それは秋葉原など最近次々と起こる殺傷事件や少年犯罪、食品偽装事件やマネーゲーム事件、汚職事件等の当事者にもあてはまることではないでしょうか。
かつてない不況が世界全体を覆う今こそ、まさに「学力とは何か」を問い直す時期がきています。これからの未来を生きる子ども達には、「個人が所有する学力」と同時に「他者との関係を豊かにする学力」を培わせるべきだと強く思います。
小さな山村・泰阜村で実践される教育活動では、この「他者との関係を豊かにする学力」を育むことができると確信しています。今年も、へき地山村からの本質的な教育改革への挑戦にご期待ください。   (事務局長 辻だいち)



2008年12月30日
『他団体のキャンプ報告会と山賊キャンプ 〜 また来年! 〜』

 12月23日に、長男と東京に行ってきました。小学5年生の長男が、今年夏休みに八丈島の1週間キャンプに参加したのですが、そのキャンプの報告会が東京で開催されたからです。長男はどうしても行きたい、一緒に参加した友達に会いたい、と言い張り、はるばる5時間かけて東京まで出て行ったわけです。
 キャンプリーダーの学生さん達が運営する手造りの報告会は、同じくキャンプのプロである私から見ればたどたどしいことこの上ありませんでしたが、親の目でみれば学生さんたちの想いが伝わってきて、本当に良いキャンプだったんだな、と感激しました。長男はといえば、4ヶ月ぶりに会う友達に、最初は恥ずかしがっていましたが、最後は名残惜しそうに「来年もまたキャンプ一緒に行こうな!」と約束し合っていました。
 それにしても感心したのは、人口2000人を切る村から東京に行くというのに、長男は報告会以外には興味を示さなかったことです。東京で、見たいもの、行きたいところはたくさんあると思うのですが、とにかく「友達と会いたい」の一点張りで、報告会のその2時間のためだけに東京日帰りです。往復10時間かけました。まるで東京で用件があり、出張を重ねる自分のようです(笑)。長男も、帰りのバスでは「お父さんって、(出張が)けっこうたいんへんなんだね」と言っていました。
 たった1週間といえども、キャンプ等で同じ釜の飯を食べるということは、本当に良い友人が生まれるものなのでしょう。だったら1年間、暮らしの学校「だいだらぼっち」みたいなところに行ってみるか?と聞いたら、長男の答えは「う〜ん・・・」でした(笑)。
 泰阜村では、グリーンウッド主催の「信州こども山賊キャンプ」の年末年始コース真っ最中です。12月23日〜1月5日まで、全5コース140名の子どもが参加しています。このキャンプでも「また来年一緒に参加しようね!」という会話がなされることを願います。そして、来年の暮らしの学校「だいだらぼっち」へチャレンジする!という子どもが現れるとすればすごいことなのですが! それは私の長男を見ていても難しいことなのかもしれませんね。
泰阜村の年末年始は、昔ながらにゆっくり過ぎていきます。今年最後の日と新年の最初の日を、ここ泰阜村で迎えるキャンプの子ども達は、直接年末年始の文化と触れ合います。メディアが発達し、家にいながら除夜の鐘つきの映像や新年の情報が忙しく飛び込んでくる現代で、映像や情報からではなく、自らの感性で本物を吸収することの難しさと素晴らしさを感じてほしいと思います。
今年1年、本当にお世話になりました。良い新年をお迎え下さい。(事務局長 辻だいち) 



2008年12月22日
『全国のへき地で講演です!』

 今年は、全国のあちこちから講演に呼ばれました。それも、グリーンウッドの拠点である泰阜村に負けず劣らず?のへき地からが多のです。北海道の大雪山、同じく北海道の中頓別町、長野県の乗鞍高原、沖縄の名護、高知の四万十流域などなど。
そこで出会った人々、つまり講演に参加した人々は、都市部との交流を現金化し、地域活性化に結びつける発想の人が多いように思えました。修学旅行が文化施設観光型から体験活動型に変遷したり、環境への関心の高さから農山漁村におけるエコツーリズムが台頭してきた影響でしょうか。
私は、グリーンウッドが実施している山賊キャンプや暮らしの学校「だいだらぼっち」を地道に進めてきたことが、今は地元の子ども達の教育を真剣に考える地域住民が増えつながり始めている点を指摘し、それこそが実は地域の教育力を研ぎ澄ますことになること、そして、都市部の子ども達を受け入れることに労力を注入するだけではなく、受け入れる地域の教育力を強化することが、遠回りなようでいて実は近道の地域活性化のやり方だということを強く伝えました。
この主張に共感する人々は少なくない、と感じています。なぜなら地域の教育力を研ぎ澄ますことはその地域にファンを地域外に創ることにつながり、結果的には都市と農山村の良質な交流が実現できるからです。来年は、このことに一定の成果をあげている私達グリーンウッドへの視察の依頼が急激に増えています。
泰阜村もそうですが、全国にはのっぴきならぬ課題に直面している小さな地域、すなわちへき地、そして村、集落が無数にあります。願わくは、切り捨てられてきた小さな地域同士が、依存の構造ではなく自立の構造を構築し、教育を中心に据えた持続可能な地域づくりというテーマで、ゆるやかに協力していければ良いなあ、と夢みています。
それにしても、全国のへき地で出会った人々の元気なこと! やっぱり、これからも「へき地」がおもしろいですよ!(事務局長 辻だいち)


                                                                                                 >代表だいちのGREENWOODコラム TOPへ 


NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター
〒399-1801 長野県下伊那郡泰阜村6342-2  TEL : 0260(25)2851  FAX : 0260(25)2850


Copyright c NPO-GreenWood. All rights reserved