2007年8月31日 『山賊キャンプがウケるワケ(理由)』
8月30日に、夏の信州こども山賊キャンプが終了しました。全国から本当にたくさんのこどもやボランティア学生が集いました。この場を借りて、参加していただいたみなさんやキャンプを下支えしていただいた関係者の方々に御礼申し上げます。 キャンプを実施した1ヶ月半の間に、参加者もたくさん来ましたが、視察や取材もたくさん来ました。まさに次から次へ、という感じで、対応するのも一苦労でした。訪れた方々が一様に口にする「このような僻地にどうしてこんなに人が集まるのか」という疑問。それへの答えになるかどうかはわかりませんが、信州こども山賊キャンプの際立つ特徴を紹介します。それは「村の暮らしのありようをできるだけキャンプに落とし込む」ということです。 自分たちで薪をくべて飯を炊く。暮らしの仕事は分担する。川の環境に配慮した食器の洗い方をする。暮らしの課題を寄り合いで話し合って解決する。これらは現実の泰阜村の暮らし、つまり僻地集落において人々が生き抜く時間・空間の中で繰り広げられる当たり前の光景です。それを現代風にアレンジしてキャンプに落としこんでいます。この村の暮らしに似合わないものはキャンプに落とし込まない。この村の暮らしのありよう、それは手間隙かかるということ、つまり「ちょっと不便」ということです。この「ちょっと不便」を徹底的に楽しむ、ということが、信州こども山賊キャンプの際立つ特徴です。 そしてこの特徴が、こども達や保護者、ボランティア学生に圧倒的に支持されています。最近では都会だけではなく、農村からの参加も増えてきました。泰阜村の暮らしのありようが、現代の教育課題解決のために必要となる時がもうそこまで来ています。 (事務局長 辻だいち)
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2007年8月29日 『教員との協働 〜環境省の仕事から〜』
27日〜29日まで、環境省の中部地区環境教育リーダー研修事業に講師として参加しました。4月から検討委員として参画し中身を創り上げ、当日は講師です。中部地区(東海、北陸信越)から教員と一般市民50人が長野県塩尻市に集いました。 冒頭に、蛍を通した環境教育が、荒れる学校を救ったという事例が紹介されました。これには私もびっくりで、改めて環境教育の持つ可能性を感じました。一方で、これから始めようとする教員の中には、「木や草花の名前を覚えなきゃ」とまっしぐらな人もいました。私は常々思うのですが、木や草花の名前を機械的に覚えるよりはそれが「食べられるか食べられないか」あるいは「使えるか使えないか」という基準で覚えていくことが大事だと思うのです。つまり、暮らしに活きていくように学ばないと、環境教育は暗記科目と同じになってしまうのではないかと危惧します。それをやわらかく伝えると、その教員はなるほどと感じたのかどうかわかりませんがきょとんとした顔をしていました。 今回の研修では、教員と一般市民の方々がお互いの立場や進め方を学びあうことの可能性を感じました。私自身も今回の教員の方々との協働を通して、グリーンウッドが地域の公立学校に比肩する自然学校というべき存在に発展していくためには何が必要かをしっかりと考えていきたいと思います。 (事務局長だいち)
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2007年8月18日 『生活科教育・総合学習の教員にエール』
8月17日、第17回生活科教育研究会全国大会にシンポジストとして呼ばれて東京に行ってきました。グリーンウッド主催の「信州こども山賊キャンプ」も心配でしたが、ここは一念発起で出張です。 この研究会、平成3年度に「生活科授業の創造」をテーマに研究を始めて以来、今年で17回目の全国大会を迎える息の長い研究会だそうです。今回も200名以上の教員がっ全国から集まって来ていました。 シンポジウムは、文教大学教授の嶋野道弘氏(前文部科学省視学官)のコーディネートのもと、幼児教育の専門家である小田原短期大学教授の小林紀子氏と私の2人がシンポジストというこじんまりした内容でありながら、シンポジストを絞ったがゆえにフロアも巻き込んだ活発な議論が展開されました。 こどもには「拓く力があるか?」という問いに対して、私はグリーンウッドの実践を紹介しながらこどもにはもともと学びを増幅させていく力が「ある」と言い切りました。それをグリーンウッドでは「産み出す力」と表現しています。僻地山村というちょっと不便な環境の中だからこそ発揮されるこどもたちの産み出す力。グリーンウッドの教育プログラムでは、食事作りに始まる暮らしのルールや仕事の分担、1日のみんなの時間の使い方や、活動期間の予定、全員の合意、そして子ども同士・子どもとスタッフとの信頼関係や人間関係作りまで含めて、「自然の中での生活」というトータルなモノを築き上げています。 そしてその「産み出す力」を、私たち大人が「信じる」ことができるかどうか。「信じる」ことこそ、その力を引き出すことなのではないか、と教員のみなさんに対して訴えました。 こどもは教室外にこども独自のコミュニティーを創り出すものです。そしてそのコミュニティーの価値判断の基準はそんなに狂っていないはずで、むしろそのようなコミュニティーが教室外に存在したほうがこどもたちに健全な価値判断基準が育つと強く思っています。 今は、教室外にそんなコミュニティーを創り出すことが困難な時代となってしまいました。グリーンウッドの教育プログラムは、まさにこどもたち独自のコミュニティーを再構築する取り組みです。そして生活科教育・総合学習の授業もまた、まさに教室内にありながら教室外の学びを具現化できる授業ではないか、とその可能性に魅力を感じています。 グリーンウッドが構築してきた理念のエッセンスが、教室内に反映されていくとしたらとてもすばらしいことだと思いながら、全国大会を後にしました。大会に参加された教員のみなさん、共にがんばりましょう。 (事務局長 辻だいち)
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2007年7月27日 『明かします! 山賊キャンプの舞台裏!?』
7月21日、いよいよ今年の信州子ども山賊キャンプが始まりました。今年は全国から子ども1,100人、ボランティア330人が参加します。いつものごとく現場はばたばたと、そして楽しく進みだしましたが、今回は、現場を支える舞台裏の事情を紹介します。 東京・名古屋のバス出発時間。保護者からの急な申し出がたくさん出ます。アレルギー情報などは事前に集めてそれを配慮した献立を作成するのですが、何せ当日の急な申し出。それにも関わらず、そのアレルギーのこどものために、グリーンウッドの食材管理スタッフや事務局スタッフが「あーでもない、こーでもない」と頭をつきあわせて対策を考えています。すごい! また、集合場所に遅れてバスの発着時刻に間に合わない、という保護者に、パソコンの地図機能を駆使して丁寧にそして必死に伝える事務局スタッフ。みんな何とかキャンプに参加してほしい!という願いがあります。 それと、現場の食材管理がスムーズにいくように、前夜のうちに食材の仕分け(ものすごい量です)を行う食材管理スタッフ。無駄のない発注や管理も腕の見せ所です。 そして、朝、村の農家のおじいさんが朝採り野菜を持ってきます。「これは良いできだでな。きっとおいしいに」と、とても生き生きした笑顔です。村民の想いが野菜を通じて子ども達に伝わります。 そしてその一連の作業に関わる、都市部の高校生ボランティア、スペインからの留学生、国際ワークキャンプで来る外国人。みな1ヶ月以上住み込みながら、山賊キャンプを手伝います。8月の末に村の中学生の職場実習も受け入れたりします。僻地なのに、本当に多彩な顔ぶれが集まっています。その混沌としたパワーが山賊キャンプを支えています。 おまけ。事務所・倉庫には毎日毎日珍客が来ます。日中は暑さを逃れてかオニヤンマが悠々と机を横切ります。夜には明かりにつられてカワガタやカブトムシが勇ましく飛び込んできます。もひとつおまけは、「雷だ! 雨だ!」と、子どもたちの移動・運搬のために、事務所から飛び出していくグリーンウッドの代表理事(最長老むさし)。 国道もない、信号もない、コンビにもない、大型バスも入れない、人口2,000人の一級僻地にも関わらず、日本有数の集客力を誇る信州子ども山賊キャンプ。「なぜこんなに集まるの?」という問いに対するひとつの答えが、キャンプを支える「裏方」の充実さにあるのかもしれません。 (事務局長 辻だいち)
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2007年7月18日 『中越沖地震で長い揺れを感じて』
前回のコラムで少し触れましたが、東京での山賊キャンプのボランティアリーダー研修会の途中で、長い揺れがありました。後ほど新潟の中越沖地震だとわかりました。ほんの少し前に能登半島自身のことをこのコラムで書いた気がしましたが、それにしても最近は北信越地区で自然災害が多い。2004年には新潟と福井で豪雨水害、新潟中越地震、2005年には豪雪災害、2006年には長野天竜川豪雨水害、2007年には石川・富山で能登地震、そして中越沖地震。毎年毎年何かしらの自然災害が起こっています。いつからこの地域はこんなに災害天国?(災害地獄?)になってしまったのでしょうか。 能登半島地震で被災地を訪れてみた頃から感じていますが、もはや被災地にいち早く届く救援物資は企業からのものだそうです。一般市民の善意の集まりである使い古しの物資より、企業からの新しい物資のほうが被災者も喜ぶということ。これは自分が被災者という立場になったなら、当たり前のことかもしれません。ということで、被災地への救援物資援助も企業のCSR(Corporate
Social
Responsibility=企業の社会的責任)のひとつとなってきているようです。 自治体同士が災害時支援協約を結んでいるのか、中越地域には大都市の給水車やゴミ収集車が行き交っています。これも地域を越えて、自治体同志がその役割の中で支えあっています。 阪神大震災から12年。災害ボランティア、・企業や自治体の災害救援の「形」というのはどんどん変わってきています。これを「進化」と表現できるのかどうかはわかりません。しかし、私達一般市民でも実行できる「形」は何なのか?としっかりと考える時期に来ていると思います。 18日に仕事で訪れた静岡県のホールアース自然学校は、阪神大震災や中越地震でボランティアセンターを設立・運営した経験から、野外活動従事者のスキルは被災地に必ず役立つ、と、今回もボランティアセンター設立に携わっています。代表の広瀬さんは、忙しく現地と電話のやりとりをしていました。 さて。私は何をしようかな。3年前の中越地震後は、翌年に、自然の猛威におびえきった子ども達にもう一度自然のすばらしさを伝えたい、と、中越地震と福井豪雨で被災した子ども達を泰阜村に招待して自然体験キャンプを実施しました。今、私ができることは? この猛暑に、避難所で生活している人、断水で不自由な生活をしている人、救援で疲れきっている人、PTSDになりそうな子ども達が被災地にたくさんいます。暑い暑い、とクーラーのスイッチを入れるときに、ふと考えてみたいものです。「今、私ができることは?」 (事務局長 辻だいち)
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